鎮守の森の神様は

いずこへ。もはや鎮守の森などというものはなかなか見かけなくなってしまったように思いますが、それでなくとも森というのは何か神秘的なものを感じさせますね。生命だろうか。森の中へ分け入ると、その木々の下の土は幾重にも積み重なった広葉樹の葉に育まれた大地が、ふんわりふんわりとして、なんとも言えない踏み心地。けれど踏むのが申し訳ないほどに、そこにも無数の植物・動物たちがびっしりと息をなしていて、なんだか不思議な気さえする。そして、そんな森に入ると、もうずっとそこにいたくなってしまう。
近所に、街中ながら大きな木がたくさん植わっている場所があるのですが、見上げるとくらっとするほど高くて、ずっしりと太い木を見ていると、この木たちは今までどんなに長く、どんな時間を眺めてきたのだろう、と思う。静かだった場所は切り開かれ、鳥のさえずりは遠のき、苔生した土はアスファルトに取って代わり、時には根こそぎ違う場所に運ばれることもあったかもしれないが、切り倒されなかっただけでも幸運なのかもしれない。回りは幸せで穏やかな時もあったろう、騒がしい諍いの舞台になることもあったかもしれない、でも現世の喧騒に耳は貸しても口を開くことなどついぞなく、ただひたすらに黙って、何も語らず、真っ直ぐに日の光だけを求めて生きてきたのだろうし、これからもそうして生きていくのだろう。
私もそういう人になりたいのになぁ、と思うのだけれど、そうはなれないから私なのであろうけれど、いよいよ困ったものだなぁと思う、今日この頃である。