望郷期

心が疲れてくるといつも「田舎に帰りたい…」と思う。田舎を持たない人、都会生まれ都会育ちの人などはそうならないんだろうか。
「田舎に帰りたい…」
都会も楽しい。便利なのは何よりだ。田舎など何をするにも不自由で、買い物ひとつするのにも苦労する。でも
「田舎に帰りたい…」
いや、田舎に帰りたいというよりは、自然の中に佇んでいたい、という方が正確かもしれない。疲れてくるとすぐ、人気のない山奥や海沿いのコテージのようなところにこもる妄想をはじめてしまう。
でも実際にはそんな場所がどこにあるんだか知らないし、行くとなるとお金がかかるし、そういう時間を作ろうと思えばまた家がなんじゃ子供がかんじゃ仕事がうんじゃらとややこしいし、計画をたてる前からめんどくさくなって、するといちばん楽な選択肢、
「田舎に帰りたい…」
になるんだけど、田舎に帰るのにも私などはけっこうな大金(交通費)がかかるのでそうそう簡単には帰れなくって、じゃあわざわざどこか行かなくても住んでる場所がそういうところだとばっちりなんじゃん?というわけでしばしば
「田舎に住みたい…」
となる。心が疲れる大きな原因のひとつに育児に関する悩みがあったりするのだけど、子供と喧々諤々やりあったあとなど、「あぁ、窓の外に大きな庭や、もしくはもうそこが山の中だったりちょっと行くと小川が流れていたりなんかしたらこんなぎゃーぎゃー騒いだあとでも一緒に外を走り回ったりすればすぐに気持ちもほどけそうなのに」なんていう新たな妄想がはじまって
「田舎に住みたい…」
とよく思う。今だって実は引越ししたくてたまらない。でもだいたいが引越ししたくなるときって環境を変えれば何かが良い方向に変わるんじゃないかっていう根拠の薄弱な現実逃避だったりするしだいたい引越ししてもどこ行ってもたいして変わらなくて、それより引越しなんて田舎への帰省費とは比べ物にならないくらい膨大なお金がかかるわけだし学区が変われば子供にとっては転校という大きな負担がかかってくるのがとても問題だしで
「しのごの言ってる暇があったら気分転換して前向きにがんばれよ」
というところで妄想を振り払って本日のおしごとしゅーりょー。